【ヘラルド経済=チャン・ユンウ記者】 トランプ第2期政権がアメリカ国際開発庁(USAID)を事実上閉鎖して以降、アフリカで紛争が急増したことを示す研究がある。
国際学術誌『Science』第392巻第6799号に最近掲載された論文で、ジュネーブ大学院のドミニク・ローナー教授ら5カ国の研究チームは、USAID撤退がアフリカの紛争に与えた影響を準実験的手法で分析した結果を報告した。アフリカ870の行政区を単位に21カ月分の紛争データを解析し、地域単位でUSAID撤退の紛争影響を実証した初の研究と位置づけられる。
研究チームは「USAID撤退による紛争増加は有意かつ持続的だ」と結論づけ、「大規模かつ急激な援助削減が脆弱な地域の不安定化を招き得ることを実証した」と指摘した。
2025年1月末、トランプ政権は就任後1週間足らずでUSAIDの全事業に対する一括業務停止命令を出した。60年以上にわたり100か国以上で保健、食料、教育、民主主義支援を続けてきた世界最大の国家援助機関が、一夜にして活動を停止した。
医学分野では警告が出ていた。医学誌『Lancet』は今回の援助削減で2030年までに数百万人の追加死者が出ると分析した。しかし、紛争への影響はこれまで実証的に示されてこなかった。援助が紛争を減らすのか、逆に煽るのかは15年以上にわたり学界で議論されてきたが、本研究はその議論に直接的なデータを提供した。
研究チームは2024年3月から2025年11月までの21か月間にわたり、アフリカ870の行政区の紛争データを解析した。地域別の米国援助規模を含む「ジオコーディング援助データセット(GODAD)」と、紛争の発生日時・場所・種類を記録した「武装紛争位置・事件データ(ACLED)」を組み合わせ、USAID撤退前後の10か月を比較した。歴史的に米国援助を多く受けた地域とそうでない地域を分ける二重差分法(差の差法)を用いた。
方法論の信頼性を高めるため、撤退前の時点で両グループ間に紛争傾向の差がなかったことを統計的に確認した。また、米国以外の他国の援助を基準に同じ分析を繰り返しても有意な結果は得られなかった。これは今回の効果がUSAID撤退に特有の現象であることを支持する。
結果は明瞭だった。米国援助を上位25%水準で受けていた地域では、援助がなかった地域より撤退後の紛争発生確率が約6.5%ポイント高かった。紛争件数は10.6%増加し、戦闘回数は6.9%、戦闘関連死者は9.3%増加した。抗議や暴動の発生確率も10%上昇した。
研究チームはウガンダ内の2地域を比較事例として示した。援助が全くなかったキバレと、住民1000人当たり251ドル(約3万5140円)を受けていたカユンガを比較すると、カユンガで撤退後の紛争発生確率が3.1%ポイント高まった。
抗議や暴動は撤退直後から即座に反応を示した。一方、戦闘や民間人に対する暴力は時間が経つにつれて深刻化し、その効果は持続した。
研究チームはこの現象を二つの力の衝突として説明する。
援助は現地経済を潤すため、生活が成り立てば命を懸けて争う理由が減る――いわゆる「機会費用効果」が働く。一方、援助が入ることでその資源を巡る勢力間の争いが生じる「略奪効果」もある。既存研究が援助と紛争の関係で割れた結果を示してきたのは、どちらの力が状況によって優勢になるかが異なっていたためだ。
しかし援助が突然途絶えると、両者は同じ速度で反応しない。研究チームは「援助が急激に途絶えると、戦うことの機会費用は即座に崩れるが、過去の援助で蓄積された資源やインフラといった略奪対象は短期間では消えない」と説明する。奪うべきものは残るのに、争わない理由が突然失われるため、紛争が助長される構図が生じる。
すべての地域で紛争が一律に増えたわけではない。行政の抑制機能が強い国や民主的制度が比較的整っている国では、USAID撤退の衝撃ははるかに小さかった。逆に制度が脆弱な国では衝撃が大きく表れた。
研究チームは「包摂的な制度が人道的・経済的衝撃を緩衝する役割を果たした」と説明する。言い換えれば、ガバナンスが弱い地域ほど外部援助の衝撃に脆弱であるということだ。
中国の援助が米国援助の空白を埋められるかも分析対象となったが、結論は明白だった。中国援助の露出が高い地域であっても、USAID撤退の衝撃は軽減されず、空白は埋まらなかった。
ただし今回の分析は歴史的な援助の露出と撤退時点を結び付けた間接的な手法であり、USAID削減が具体的にどのような経済的経路を通じて紛争に至ったのかを詳細に追跡したわけではない。また、アフリカに限定した分析であるため、軍事・麻薬取締目的の援助比率が高い他の地域に同一の結論が当てはまるかは不明である。
【参考論文 DOI : 10.1126/science.aed6802】













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