

タイのパタヤ近郊、シアムカントリークラブの広大な敷地、通称「ザ・フィールズ(The Fields)」。毎年12月ここでワンダーフルーツフェスティバルが開かれる。音楽とインスタレーションアート、ウェルネス、美食、多彩なトークやワークショップが一体となるこの祭りには、世界144カ国から人が集まる。私が訪れた2024年は、ワンダーフルーツにとって10回目の節目の年だった。

会場に足を踏み入れた瞬間、まず感じたのは「息が通る」ということだった。これまで訪れた国内外の多くのフェスティバルを通じて、単位面積当たりの人口密度がこれほど低い場所は見たことがない。ワンダーフルーツでは、どのステージに行っても自分だけの空間が確保されている。多くの人が踏み入れても芝生は生き生きとしており、トイレ前の長い列も、転がるゴミも見当たらない。2019年から使い捨てプラスチックを全面禁止し、ココナッツ殻や米で作った環境に優しいカップを販売、すべての飲み物は個人のタンブラーで提供するルールを導入した。多少の不便を伴うこの規則が、皮肉にもワンダーフルーツ独自の澄んだ快適さを作り上げていた。

ワンダーフルーツには、他のフェスティバルでは得にくい独特の感覚があった。端的に言えば「競わない」ことだ。より良い場所を確保しようとする詰めや、写真を多く残そうとする執着、早く移動しようと焦る見えない緊張感がここには存在しない。主催者は当初からこのイベントを単なる音楽フェスではなく、音楽とアート、生活と自然を織り合わせる有機的な体験と定義してきたが、その宣言は言葉に終わらず、空間の隅々で体感できた。会場を埋めるアートインスタレーションのおかげで、ステージ間の移動路自体が巨大な展示空間になっている。来場者は単に祭りに来たのではなく、大きなもてなしの空間に招かれたような気分になる。参加者たちがワンダーフルーツに他では味わえない絆と安全なコミュニティ感を見いだす理由に、深く共感した。

会場の中心には実際に運営中の農場があり、現地の農夫が丁寧に有機作物を育てていた。農場のそばでは持続可能な農業をテーマにしたトークやワークショップが音楽パフォーマンスと並行して行われる。ステージ前で激しく踊った後、畑脇のベンチに腰かけて講演に耳を傾け、また音楽へと戻る動線がごく自然だった。昼のワンダーフルーツが見せる風景はとりわけその自然さが際立っていた。無理にスケジュールを切り分けたわけではないのに、体が最も快適な速度を自然と選んでいた。

食の体験も忘れられない。タイ各地のローカルシェフが精選したフードゾーンは、いわゆる「フェス飯」に対する固定観念を瞬時に覆した。深く香るスパイス料理から、絞りたての新鮮なフルーツジュースまで、タイ固有の豊かな食文化がこのフェスティバルの大きな一部として溶け込んでいた。

<Live 実況を聞く> Polygon Live at Wonderfruit
初めてポリゴンステージ(Polygon Stage)を目にしたときの震えるような高揚はいまだに鮮烈だ。遠くから放たれる存在感に圧倒されるしかなかった。巨大な半球ドームは休むことなく変化するLEDで覆われ、会場のどこにいてもその光が夜の海の灯台のように指標となった。ドームに踏み入れた瞬間、感覚が全身で目を覚ました。90台のスピーカーを360度に配した「L-ISAイマーシブサウンドシステム」が音を自在に動かし、音楽が空間を満たすだけでなく、巨大な音の総体に自分ごと飲み込まれるような驚きを与えた。フランスのメディアアートコレクティブ「ビジュアルシステム(Visual System)」が手掛けた照明はビートと完璧に同期し、毎晩照明だけの専用ショーが行われることもあった。どのアーティストがステージに立っても、その空間自体がひとつの芸術作品だった。

湖畔にある「フォビデンフルーツ(Forbidden Fruit)」ステージでは、開催中ずっと爽やかなハウスミュージックが流れ、深いジャングルに潜む「クオリー(The Quarry)」ステージは華やかなレーザーと照明が織りなすディープハウスとテクノで森を満たしていた。構造美が際立つ「ソーラーステージ(Solar Stage)」では、日の出と日の入りに合わせた特別なセットが組まれる。12月のタイの空がオレンジや赤に染まる時間に始まる音楽は、視覚的な衝撃を伴い忘れがたい。

夜が深まるに連れて、フェスティバルの温度は徐々にだが確実に変化した。昼は余裕と平和が漂うエコパークのようだったワンダーフルーツが、夜は静かに燃え上がる炎に近づく。派手な見せ方はしないが、決して消えないエネルギーがある。12月の夜気は汗を冷ますほど涼しく、どのステージ前にいても快適さは失われず、音楽は夜通し鳴り続けた。ソウルへ戻る道中、何度も考えた。これまで訪れた多数のフェスティバルの中で、最も快適で、最も静かで深い感動を残した場所。私にとってワンダーフルーツはそう記憶された。
[フェスティバル情報]
ㅇ ワンダーフルーツフェスティバル (Wonderfruit Festival 2024) ㅇ 地域 : パタヤ、タイ
ワンダーフルーツフェスティバルは毎年12月にタイのパタヤで開かれる音楽フェスだ。「人間と自然の共存」を掲げ、音楽・美術・ウェルネス・美食・トークなど6つのコアバリューを有機的に組み合わせる。環境配慮型の素材で作られたステージや使い捨てプラスチックの全面禁止など、フェス文化の新たな選択肢を示す。360度立体音響のポリゴンステージや、日の出・日の入りが美しいソーラーステージといった独創的な空間体験を提供し、世界中のクリエイターが集まり快適で安全な絆を分かち合う未来型コミュニティフェスとして定着している。
文・写真 チョン・ギョンア(旅行作家)














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